まったり過ごした徳島での一日 スーパーマーケットの意外な舞台裏

 Tシャツ一枚でも汗ばむ日があったかと思えば、冷たい雨が降りしきる日が続いたりといかにも季節の変わり目らしい不安定な毎日ですが、皆さんはいかがお過ごしですか。

 僕はこの数週間、最近ではまれにみるほどバタバタした日々を過ごしていました。会社の仕事はまあそれほどでもないのだけれど、実はこれまでとは違うペンネームで長編小説を上梓し、それについての著者インタビューを受けたり(いつかこのブログで紹介したいと思います)、ビジネス書の執筆がいよいよ佳境に入ったり、来年、出版を予定しているノンフィクションの企画が動き出したりと、物書きとしての仕事であわただしかったのだ。

 でも、忙中閑あり。先日は「『日経ベンチャー』経営者クラブ」事務局長として徳島市に出張し、まったり過ごしてきた。「日経ベンチャー」経営者クラブは、阿波銀行が主催する「食のマッチング・フェア」――徳島県産の食材をアピールするため、県内の生産者と大手の食品スーパーや百貨店などのバイヤーとの商談の場を提供するイベントに協力しており、それに関連して主催者の方々にご挨拶するのが仕事である。

 羽田発10:25のJAL1433便に乗って徳島空港へ。タクシーで会食の場に直行し、主催者の方々と挨拶を交わす。続いて「食のマッチングフェア」のプレイベントに出席して、イトーヨーカ堂で青果の仕入れを担当するチーフバイヤーの講演「首都圏バイヤーが求めるもの」を聴講する。その後は帰りの便まで自由行動なので、市内を散策し(他の地方中核都市に比べてチェーン店の存在が目立たずすごく雰囲気がある)、適当なお店に入って鳴門わかめや阿波牛のたたきを肴に地ビールの阿波うず潮ビールを飲む。

県の名産、鳴門金時を使ったお菓子。素朴な味わいがいいです。

 こんなにのどかでまったりした時間を過ごすのは本当に久しぶりである。少なくとも編集長時代には皆無だった。もちろん編集長の仕事が嫌だったわけではない。それどころかとてもやりがいがあったと思う。でも読者の方を向いてコンテンツづくりに注力しているとき以外のストレスがけっこう激しかった。おかげで1年間で10kg以上太ってしまったことがあったし、髪もいまよりはるかに薄くて、アソシエ制作の割鞘(毎朝木刀を振っているユーロウェスタンマニア)義一郎から「頭がバーコード化していますよ」などと言われたこともあった。いつか無意味なストレスがあまりかからない状態で、また雑誌を作ってみたい気もしないではない(微妙な表現ですね)。

 ところで、ご講演いただいたイトーヨーカ堂のバイヤーの方の話がとても面白かった。それによれば、かつて売上高の5〜6割を占めていた衣料品の売上比率は今や35%程度に低下し、食品がスーパーの屋台骨を支えている。しかし世帯数の増加と平均世帯人員数の低下によってその消費行動は大きく変わり、青果はばら売りが中心になりつつあるという。イチゴを一個だけ買う人も少なくないというからすごいですね。また果物自体の売れ行きは全盛期より3割減ってしまった。理由はスイーツや飲料に消費がシフトしたこと、食べるのに手間がかかること、味に当たり外れがあることだそうである。スーパーの店頭というのはまさに時代を映す鏡ですね。流通業とは変化対応業だと言われるゆえんでと思う。

 ところで食品スーパーでのお客の平均滞留時間はどのくらいだと思いますか? バイヤーの方によれば13分だそうです。意外に短いんですね。