仕事のミスを減らすには? ときにミスに寛容になることも

 ようやくブログをスタートすることができました。訪れてくれた皆さんに心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

 でも、まだ慣れないんですよね。昨日、アクセス件数をカウントできるように設定したつもりだったのですが、いつまでたっても0のままなのでおかしいと思い、アソシエ編集部のブロガーに相談したら設定が間違っていました。情けないですね。

 ――などとブツブツひとり言を言っていたら、若い友人から電話がかかってきた。「仕事でうっかりミスをしてしまったんです。情けないやら自己嫌悪やらでヘコんでしまって……」。人ごとではないですね。実は僕もけっこうおっちょこちょいで、とりわけ若いころにはとんでもないポカをやらかしていたから。そうそう、こんなこともありました。


 二十代後半のこと。ビジネス誌の記者だった僕は先輩記者と二人でリポート記事を担当することになり、中京圏に本社を置く大企業の役員の取材を取りつけた。取材当日、僕は一人でその大企業を訪ねた。先輩は東京で別の取材である。
 受け付けで役員への面会を告げると、受付嬢がきょとんとした。
「あの……Aさんへの取材で参ったのですが」
 受付嬢は僕の顔をまじまじと見つめ、それからしばらくお待ちくださいと断って内線電話をかけた。
「お客様、Aはこちらでお会いすると申しておりましたか」
 受話器を置いた受付嬢がとがめるような口ぶりで言う。
「は?」
「Aの席は東京本社にあるんですが」
「あの……それはどういう……」」
「ですのでいまも東京本社でお客様をお待ちしております」
 僕は口をあんぐり開けて、受付嬢を見かえした。
 それからどうしたかというと、実はまったく覚えていない。どのようにして東京に戻ってきたのかさえ思い出せない。当然の結果として、役員への取材は流れてしまった。編集部に戻った僕はそう白な顔で先輩にことのてんまつを告げた。先輩はあきれた顔で僕をにらみつけ、やがて静かにかぶりを振ると席を立った――。


 こういうことをやらかしてしまった後は苦い自己嫌悪を噛みしめつつ、原因を分析し、先輩のアドバイスなどももらいながら自分の行動パターンを改善するしかないですね。僕の場合はスケジュール管理に問題があったので、以来、取材などのアポが取れたときには必ず日時と場所を復唱し、手帳に詳しく書きとめるようにした。


 それにしても、あのときの先輩の対応はありがたかったと思う。僕は激しく責め立てられることも、さらし者にされることもなかった。いまだったらわからない。もしかしたら再発を防ぐためにという名目で始末書を書かされていたかもしれない。

 でも、僕は、その実害にかかわらず厳しく対処した方がミスを減らせるという考えには必ずしも賛成できないのだ。それどころか、しばしば逆効果だと思う。信賞必罰がいきすぎると、罰せられたくないために小さなミスも隠すようになり、やがて大きなミスを招くということは十分に考えられる。

 さらにミスした当人を萎縮させてしまいかねない。アメリカの少年野球ではコーチは「低めのボールには手を出すな」といったネガティブなメッセージをあまり使わないようにしているのだという。「低めには手を出すな」と言うと、少年の意識は低めのボールに向かい、かえって振ってしまったりするそうだ。「ミスをするな」という強圧的なメッセージがかえってミスを招くということもまたあり得るのではないか。

 そういうわけなので僕は部下がミスを犯したとしても、行動を改善するためのアドバイスにとどめて、決して責め立てたりさらし者にしないように心がけたいですね。僕自身、これまでに少なからぬうっかりミスを犯してきたのだから。